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Special column「アート×デザイン」
DDTN(どっかのだれかのとんでもないなにか。)
第3回「伝説的タイポグラフィー雑誌『タイポグラフィカ』」

INTERVIEW(インタビュー)
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日本デザインセンターでアートディレクター、グラフィックデザイナーを務める荒井康豪さんに、アートやデザインにまつわる話を語っていただきます。第3回目のDDTN(どっかのだれかのとんでもないなにか)は荒井さんが感銘を受けた一冊の本を紹介します。

クリエイティブな仕事をしていて、もっとも重要なのはアイデアであると思う。
さらに、その数が多いに越したことはない。ただ、アイデアとは自分の精神状態やモチベーションなど、様々な要因に左右される。そうかと思えば、ぼーっとしている時に突然カミナリに打たれたように思いつくこともある。なんとも厄介なもので、一定の産出レベルをキープするのは難しい。

いいアイデアを数多く出すということは、メンタル、フィジカルともにアスリート並みのものが必要な気がしてくる。筆者のように不摂生な生活を続けていると、うっかりくじけそうになることもあるのだ。そんな時、「その程度か?」という挑発と同時に「もっとできるはずだ!」と勇気づけてくれる1冊の本がある。

筆者にとってそれは、イギリスを代表するデザイナー、ハーバート・スペンサーが監修し、1949年-1967年の間にold series 16刊、New series 16刊の計32冊刊行された、伝説的なタイポグラフィー雑誌『タイポグラフィカ』の New series no.14である。細かくてすみません。

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『タイポグラフィカ』の大胆な実験性、自由な発想には毎号感銘を受ける。ただ、その中でも個人的に忘れることのできないのはNew series no.14のテオ・クロスビー、アラン・フレッチャー、コリン・フォーブス(注:ペンタグラム創始者)が担当したマッチ棒をひたすら表現し続ける号なのである。

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「マッチ棒を表現してください」と言われ、みなさんはどれほどの事が思い浮かぶだろうか?火薬部分が赤い1本のマッチ棒が横たわっている、もしくは指につままれているそんな感じを思い浮かべた後、当惑してしまうのではないだろうか。

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なぜ、最初に質問したかというと、いきなり目にしてしまうと、「何をヒマなことをやっているんだろう」と呆れられかねないからだ(誤解しないでいただきたい。先ほど名前を出した4名のデザイナーの方々を筆者は死ぬほど尊敬している)。まずは、みなさんに自分事にして欲しかったということに他ならない。

初めてこの本を手にした時、「たかがマッチ棒に、これほどの表現バリエーションがあるのか! というか、こんなんしてよかったのか!」ということに愕然としたことを覚えている。

寄り、引き、イラスト調、並べてみる、横、タテ、パターン、燃やしてみる、粉々にしてみる、等々。

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そして、最後にマッチ棒の隣に1本のタバコが鎮座するのである。それまでは、数や形の違いはあれ、マッチ棒のみで成立してきた世界に! 異物が登場したのだ! つまり、これにより異物を加えたバリエーションの始まり、無限のバリエーションを予感させているのである。

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お気づきだろうか?
この本が発しているメッセージは「そこにタブーは存在しない!」ということなのである。いいアイデアを数多く出すこととはなんでもありだという開き直りが大事なのだと思う。しごく真っ当な意見に聞こえるかもしれないが、人間というのは知らず知らずのうちに制約を決めて能力の範囲を日々狭めていってしまう生き物である。偉大な先輩方のとんでもない本は、クリエイターが住むべき、とんでもない世界に私たちを引き戻してくれる。

注:ペンタグラム(イギリスを代表する老舗デザイン会社) http://www.pentagram.com

(Profile)
荒井康豪
アートディレクター/グラフィックデザイナー。1974年東京都生まれ。
2003年より日本デザインセンター在籍。主に企業のブランド構築のためのクリエイティブを展開。
平行して実験的なグラフィック作品の制作、発表もおこなう。
ONE SHOW DESIGN金賞・銀賞、D&AD NOMINATION、ニューヨークADC銀賞など。

http://www.yasuhidearai.com


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